亡くなった時期で相続人が違う!? 昔の法律を知らないと古い登記の共有者は探せない。

宿輪

やっと、国も本気になってきたようです。

国は「所有者不明土地」によって公共事業や災害復興工事に支障が出ている対策として、2020年の臨時国会に相続登記義務化の法案を提出したいとの考えを発表しました。(平成31年2月8日法務省発表)

現在、相続登記は義務ではありません。

登記には相当の費用も掛かり面倒ですので、売却などの予定が無い場合は、相続登記をしないことが多いのです。いまだに、明治時代の登記のままという不動産も存在します。

相続登記の前提となる所有者の確定は民法の規定によります。
しかし、この民法は何度か変更されており相続発生時期により内容が異なります。

相続人は、相続時の民法で決まる

古い登記の土地などを売却したい場合は、まず相続登記をして今生きている人に所有権を移転します。その後、売却による所有権移転をして処分完了となります。

民法は、以下ように改正されています。

・明治31年7月16日~昭和22年5月2日  ⇒旧民法
・昭和22年5月3日~昭和22年12月31日 ⇒応急措置法
・昭和23年1月1日~昭和55年12月31日 ⇒新民法
・昭和56年1月1日~現在          ⇒改正新民法(昭和56年改正)

事例:登記名義人が昭和20年に死亡していた場合

  • まず、家督相続により新たな戸主が、不動産の所有者になります。
  • 家督相続した者が昭和40年に死亡すると、新民法で相続人が決まり共有者になります。
  • さらにその相続人が昭和60年に死亡すると、改正新民法で相続人が決まり共有者に加わります。
  • さらにさらにその相続人が、平成15年に死亡すると、改正新民法で相続人が決まり共有者に加わります。

このようにして増え続けた共有者全員がハンコを押した遺産分割協議書を作ると、やっと相続登記ができるようになります。

民法による相続人の違い

【旧民法-家督相続】明治31年7月16日~
昭和22年5月2日以前に戸主が死亡している場合は、旧民法が適用になり家督相続となります。

旧民法では、家の財産は戸主に属するものとなりますので、前戸主の一身に専属するものを除いて、一人の家督相続人が包括的に承継します。

法定家督相続人になるのは被相続人の戸籍に同籍している直系卑属の男子が優先され、その中でも年長者が優先順位者とされていました。
男子がいない場合は女子が戸主となります。

また、旧民法では60歳になると隠居が認められていました。
隠居すると戸主を引退しますので、家督相続されて新しい戸主に財産が承継されます。

この場合、隠居した時点で、家督相続されていますので、新民法施行後に死亡したとしても、家督相続された財産は新民法では相続されません。

登記が隠居の前か後かで相続人が違いますので、注意が必要です。

法定家督相続人が、家督相続の開始前に死亡していた場合、その者の直系卑属(被相続人から見て孫など)が、代襲家督相続人となります。

隠居の戸籍上の記載例

【旧民法-遺産相続】明治31年7月16日~

戸主以外が死亡したときは遺産相続となります。上記のように、家の財産は戸主に属していましたので、不動産などの財産は無いのが通常ではありますが、隠居した後に取得した不動産などがあった場合には遺産相続となります。

・第一順位:直系卑属
非嫡出子の相続分は、嫡出子の1/2
・第二順位:配偶者
・第三順位:直系尊属
・第四順位:戸主
・代襲相続について
離縁した養子の子にも代襲相続権が認められていました。

【応急措置法】昭和22年5月3日~

旧民法の家を基本とする制度が憲法の精神に反することから、応急的に立法されたもので、新民法の基礎となりました。( )内は法定相続分。

・第一順位:配偶者(1/3)と直系卑属(2/3)
・第二順位:配偶者(1/2)と直系尊属(1/2)
・第三順位:配偶者(2/3)と兄弟姉妹(1/3)
・代襲相続:兄弟姉妹には代襲相続は無い

【新民法】昭和23年1月1日~

・第一順位:配偶者(1/3)と直系卑属(2/3)
・第二順位:配偶者(1/2)と直系尊属(1/2)
・第三順位:配偶者(2/3)と兄弟姉妹(1/3)
・代襲相続:兄弟姉妹の直系卑属は代襲相続人となり、制限はない

【改正新民法】昭和56年1月1日~

・第一順位:配偶者(1/2)と直系卑属(1/2)
・第二順位:配偶者(2/3)と直系尊属(1/3)
・第三順位:配偶者(3/4)と兄弟姉妹(1/4)
・代襲相続:兄弟姉妹の代襲相続は、その子までに制限

緊急措置法以後は、兄弟姉妹の代襲相続の部分と相続分が変更されています。
今年、40年ぶりの民法(相続法)改正が施行されますが、相続人順位は変更有りません。

まとめ

以上のように、相続発生の時期により相続人が違います。名義人の戸籍等から順次相続人を確認していき、現在生存している相続人(=不動産の共有者)を確定することになります。

特に、旧民法が絡む場合などは、戸籍も筆書きで読みづらい上に、今では使わない文字や用語もたくさんあり、読み解くには相当の知識が必要となります。少子化が問題となる現代と違い、子供10人くらいは珍しくない時代もありますので、古い登記の共有者を確定するのは大変な作業です。

また、古い登記の場合には取得の「年月日不詳」もあります。

この名義人が隠居していると、取得が隠居の前か後かが分かりません。

この場合は、家督相続又は遺産相続〔隠居後の死亡又は新民法施行後の死亡〕を登記原因とする所有権移転登記の登記申請をすれば法務局は受理せざるを得ないことになっています。証明不可なので、仕方ないということでしょう。

通常は、家督相続で1人に相続されたとします。遺産相続として名義人死亡時の相続人が複数になれば、現在の共有者はものすごい人数になってしまいます。
法改正により相続登記が義務化されたとしても、それ以降の相続に適用されるものと思われます。

宿輪

今の時点で相続登記がされていない不動産があるようなら、いざ売却したいときになって困らない様に、早急に手を打ってください。

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