人生後半のイベントに備えるシリーズ「定年時の健康保険」

ライフイベントについてシリーズでお届けします。第2回は「定年時の健康保険」です。

FP中根

定年を迎える前の会社員時代は、必要な手続きを会社が行ってくれていました。ですが、退職すると全ての手続きを自分でする必要があります。
必要な手続きをしないために、もらえるはずのお金がもらえない、病気になったときに健康保険が使えないという事もあり得ます。

ここでは病気などの不測の事態に備える健康保険に関して、定年を迎えた後の働き方によってどのような手続きをするのか解説します。

定年を迎えた後の働き方による健康保険の3つの選択肢

定年を迎えた後の働き方によって、健康保険の選択は以下のようになります。

 

働き方 労働時間 健康保険の選択
定年前に勤めていた会社に継続雇用。 ①  他の正社員の勤務時間の75%以上働く場合等 (1)
② ①以外の働き方 (2)
定年退職後、すぐ新しい会社に再就職。 ①  他の正社員の勤務時間の75%以上働く場合等 (1)
② ①以外の働き方 (2)
定年退職後、まずは新しい会社を探す。 (2)
会社を起こして独立し新たに経営者となる。 (2)または(3)
仕事をするのを止める。 (2)

選択(1)他の正社員の勤務時間の75%以上働く場合等

「正社員が週40時間勤務の会社で週30時間働く場合」など、他の正社員の勤務時間の75%以上働く場合は健康保険に継続して加入することになります。
また、社員数が500人以上の会社は、働く時間が週20時間以上で、月給が8万8千円以上になる場合も加入することになります。
再雇用や再就職の場合は新しい保険証(被保険者証)に切り替わりますが、継続雇用の場合はそのままであることもあります。

選択(2)(1)以外の場合

(1)に該当しない場合は、新たに健康保険に入ることになります。この場合は以下のI.からⅢ.までの3つの中から選択をします。

他の家族の扶養家族になる

奥様(配偶者)やお子さまなど、他の家族の方の扶養家族になる方法です。
扶養家族と認められる条件は以下のa又はbとcに該当する場合です。

    1. 他の家族が「特定の親族」である
      「特定の親族」とは、直系尊属(祖父祖母、父母等)、配偶者(事実婚も可)、子・孫、兄姉弟妹です。これらの親族である事だけが条件で、同居している必要はありません。
    2. 他の親族が「その他の親族」であり、かつ同一の世帯である
      その他の親族とは、特定の親族にあたらない以下のような親族を言います。特定の親族より少し遠い関係になります。

      1. 伯叔父伯叔母、甥姪、ひ孫
      2. 兄弟姉妹の配偶者、子・孫の配偶者
      3. 配偶者が亡くなった後の配偶者の父母や養子縁組していない連れ子

      また、「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。a.では同居は条件にありませんでしたが、ここでは同居が条件になります。

    3. 主として生計を維持されている
      「主として生計を維持されている」とは、扶養している人の収入により、その人の暮らしが成り立っていることを言います。具体的には以下の基準に当たるかどうかで判断します。

      1. 同一世帯に属している
        年間収入が130万円未満(60歳以上または障害年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)で扶養している人の年間収入の2分の1未満である場合。
      2. 同一世帯に属していない
        年間収入が130万円未満(60歳以上または障害年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)で、扶養している人からの援助による収入額より少ない場合。援助の実績確認として、預金通帳のコピーなどが求められることがあります。

なお、この扶養家族と認められる条件は「協会けんぽ」のものです。他の健康保険組合の場合は、一部異なる場合があります。
扶養家族と認められる条件は上記のとおり厳しいものですが、逆に認められた場合は健康保険の保険料を負担する必要がなくなるので、最も負担が少ない形になることが可能です。

定年前に勤めていた会社で加入していた健康保険を任意継続する

任意継続とは「退職した後でも、退職前の会社の健康保険を継続する制度」です。
会社の健康保険は会社単位での加入するため、退職をすると健康保険から外れる事になります。しかしそれまで会社の健康保険に加入していた権利を尊重するべきという趣旨により、2カ月以上加入していた人が希望すれば退職後も2年間に限り継続できるようにした仕組みです。健康保険を任意継続するメリットとデメリットは以下のとおりです。

  1. 任意継続するメリット
    1. 毎月の保険料に上限がある
      会社員時代は、健康保険の保険料は会社と折半です。その折半が無くなり全額自己負担となるため、任意継続の保険料は会社員時代の保険料の倍額と考えてほぼ間違いありません。
      ですが任意継続の保険料は最高限度額があるため、退職時の給与が高額な方は任意継続の健康保険料が安くなります。なお任意継続の保険料は、月額 32,116円が上限となっています。そのため月給(正確には標準報酬月額)が 54万5千円以上の方は、健康保険の保険料が 月額 32,116円以上になりますので任意継続された方が保険料の負担が少なくなることが見込まれます。
      ※ 上記金額等は平成30年4月の協会けんぽの場合の例です。
    2. 会社員時代とほぼ同じ給付内容を享受できる
      一部健康保険組合により異なることもありますが、健康保険を任意継続することで給付内容も継続されます。一部異なることもありますが、人間ドックの受診補助を受けたり健康保険の保養所施設を利用したりすることも可能になる事が多いです。
    3. 一人分の保険料で扶養家族も含めて適用される
      任意継続の健康保険にも、扶養という仕組があります。そのため、1人分の保険料を負担すれば良く、扶養家族全員分の健康保険料を支払わずに済むメリットがあります。したがって現在扶養している配偶者や家族がいる場合は、健康保険を任意継続してもそのまま変わらず1人分の保険料で済むということになります。
  2. 任意継続するデメリット
    1. 任意継続は最長2年間
      任意継続は最大2年までとなっております。2年を過ぎると自動で脱退する仕組みです。
    2. 手続きに期限がある
      任意継続は、退職してから20日以内に手続きする必要があります。それまでに手続きをしない場合は、残念ながら任意継続となることは出来ません。
    3. 手続きが遠方になり時間がかかる可能性がある
      健康保険の事務所が東京にしかない場合は、書類が到達するまで日数がかかるかもしれません。手続きに数日かかってしまうことが考えられます。保険証が送られてくるまでに病院で診療をうけた場合は、まずはその場で10割負担分の診察代を支払います。その後、余分に払った分の払戻請求をする事になります。

国民健康保険に加入する

ⅠとⅡに該当しない場合に限らず、他の健康保険に属しない方は全て国民健康保険に加入することになります。加入の手続きはお住いの市区町村の窓口で行います。国民健康保険の特徴は以下のとおりです。

  1. 運営
    国民健康保険は、各市区町村が運営しています。加入者が納める保険料や国などの補助金によって運営されています。サービスや制度のうち、基本的な部分は法令で定められているので同じ内容ですが、支給する金額や条件などは、地域によって多少異なる部分があります。
  2. 保険料
    国民健康保険の保険料は、各市区町村が世帯単位で人数、年齢、収入等により計算します。
  3. 扶養
    国民健康保険には扶養の概念がありません。老人や幼い子供を含めて何人加入するかによって保険料を計算します。

選択(3)個人事業主でも加入できる健康保険組合に加入する

個人事業主として開業する場合は、その事業により個人事業主として加入できる健康保険組合がないか検索してみましょう。業種や従業員数や地域といった加入条件をすべて満たしているかあらかじめチェックしておきましょう。

今回の例に出した金額は、法令などの改定により変更されることがあります。詳細は専門家に必ず確認するようにしてください。

FP中根